青森ねぶた2009 Vol.49  〜 シリーズ 昨日[6月23日]のねぶた小屋 vol.39 〜
写真1 胴体部分に、書き割りをする北村氏。
  東京都内で、今年初の真夏日を記録した昨日、青森市内にある『ねぶた小屋』も、今年初めての暑さに見舞われた。北村氏を始め、多くのアシスタントがTシャツを着て作業を続けていたが、それでもビニールシートに覆われた小屋の中は、とにかく蒸し暑い。
  昨日からは、『青森山田学園』の小屋に隣接する『ヤマト運輸』のねぶた小屋にて、書き割りの作業が開始された。書き割りとは、ねぶたに色塗りするための、いわゆる仕切り線を、ねぶた師自身が墨で描いてゆく作業を指すものだ。
  まずは胴の部分の書き割りが開始され、続いて袖、背中と続く。よくテレビのニュース(今年を象徴する一文字)などで有名書道家や僧侶が、子供の手首ほどもある太い筆を扱っている光景を目にした方も多いだろうが、最初の大まかな書き割りは、まさしくそのズ太い筆にて一気に行われるのだ。
撮影日/平成21年6月23日
Picture Date
June 23, 2009

ヤマト運輸の書き割りが始まる!

 
 前回の『青森山田学園』のねぶたの書き割りは、体調不良で目にすることができなかった私にとっては、白無垢のねぶたに初めて墨入れする北村氏の動きに、感動を覚えた。
 噂には聞いていたが、北村氏の筆の動きは非常に速い。そのため、私の使用しているカメラ(EOS 5D MarkU)ではなかなかピントを合わせるのに難儀する場面も多かった。
 今現在、世界でもトップクラスの画質を誇る同カメラだが、この機種は明らかに風景写真撮影用の、動きの少ない撮影物を狙うためのカメラであって、素早い動きの被写体を追う能力は欠けている。願わくば、『EOS 1D』系カメラの撮影能力が欲しい所だが、贅沢は言ってられないのも現状だ。
『EOS 1D』系列カメラの使用が、ねぶたの制作過程の撮影に最も望ましいのには、他にも訳がある。それは、書き割り後に行われる蝋引きに関する諸事情による。
 ねぶたを近くで目にしたことがある方なら、誰もが知っているだろうが、色と色の滲みや、ねぶたをより明るく見せるために、ねぶたには蝋燭に使用される蝋を熱して、さらさらの液体状態にしてから、筆で塗っているのだ。(写真23)
 蝋を熱すると勿論水蒸気が出る。この水蒸気が紙に付くと、そこだけ水を弾いてしまい、エアブラシなどで色を吹き付けた場合に斑(むら)ができてしまうほどだ。同じように、この揮発した蝋が知らずの内にカメラに張り付き、ボディーに薄い膜を作っていることに、驚かされてしまった。カメラは絶対に蝋を熱している側には置くことができない。
 ボディーなら爪で剥がせばそれで済むが、もし、デジタルカメラの受光体(CMOS)に付いてしまったならば、自ら清掃することは不可能であり、メーカーに出しても容易には取り去ることはできなくなってしまうだろう。つまりは、カメラ自体を駄目にしてしまう危険性が非常に高い。その点、防塵防滴機能がしっかりと備わっている『EOS 1D』系列機種ならば、多少は安心して使用できる筈なのであるが、さすがに水滴よりも粒子が細かい水蒸気までをも防いでくれるとは言い難いだろう・・・。勿論、カメラ以外にも、レンズも防塵防滴機能のある高価な代物を使用しないと、何の意味も持たないということになってしまう。そうなると、使用カメラのお値段は、一台につき百万円を超えてしまう。
 いやはや、ねぶたの製作風景の撮影というのは、陰の苦労というものが付きまとう、撮影者にとっても修羅場なのである。 

写真2 『白梅』の書き割りは豫譲(よじょう)の胴部分から始まった。
写真3 『写真2』で描いた二本線の間を、アシスタントの横山さんが墨で塗りつぶしてゆく。
墨の両端1センチを残して、つまりは北村氏の筆跡と擦れを完全に消さずに塗りつぶすのが大切なのだ。
写真4
写真5 書き割りの前に、木炭でだいたいの位置を書き込んでゆく。
写真6
写真7 常に全体の流れに視線を配りつつ描いてゆく。その動きは、見事というほど軽やかだ。
写真8 筆を中空に流した瞬間を撮影。動きが速く、なかなか巧く撮れないのが残念・・・。
写真9
写真10 背中の部分を描く、北村氏。
写真11 袖の部分を描く。
写真12
写真13 動きに揺れる豫譲(よじょう)の袖の部分を描く。
写真14
写真15 どんな難所も、一気に描いてゆく。
写真16
写真17
写真18
写真19 巨大なコンパスを使い、ねぶたに描く絵柄の型紙を製作中の奥さん。型紙を作る腕は相当なものだ。
写真20
写真21 北村氏が描いた下絵を拡大した写真を横に置き、同じ模様の型紙にすべく、余分な紙をカッターで切り抜いている吉町君。
写真22 今度は、型紙に沿って、鉛筆で絵柄を入れている吉町君。
十五才の中学時代から『北村ねぶた』の製作を目にしている20才の彼は、
今では北村氏の一番弟子として重要な役回りを任されている。
写真23 右に居るアシスタントの藤井さんが、墨の塗り終わった箇所に、蝋を入れている。
写真24
写真25 腹の皺も墨で描いてしまう。
写真26
 
 
 
 
使用カメラ
撮影カメラ
EOS 5D MarkU×2