青森ねぶた2009 Vol.32  〜 シリーズ 昨日[5月31日]のねぶた小屋 vol.25 〜
写真1 自ら描いたねぶたの下絵を、北村氏に評価して貰っている伊藤さん。仕事も常に真剣であり、彼がねぶた師となる時は、決して遠くはない筈だ。
  北村隆氏の公式HPに、以下の文面がある。(以下の文面は、『北村会』のHPより抜粋させて頂きました。)
「北村隆は後継者育成の為の活動として大型ねぶた制作に興味のある方を募集致します。ご自分で描いた絵を一枚以上ご持参ください。ねぶた絵に限らず、大きさも問いません。」
  北村氏曰く、「絵を見れば、その人間の実力と、どこまで成長するのかが解る」と言う。またこうも話す。
「ねぶたを作るにあたって一番大切なのが『ねぶたの下絵』である。『下絵』が狂えば、ねぶた全体も狂う。色塗りでも、『下絵』が一枚あれば、いちいちねぶた師の指示を仰がなくても、アシスタントが塗ってゆける」とも。
  なるほど、これまでの製作現場を観て来ても、『下絵』にて寸法を割り出し、その形の調整をする姿を、何度も目にしている。謂わば『下絵』とは、ねぶたの設計図という訳である。その『下絵』を巧く書けるか否かで、ねぶた師の実力が解るということなのだ。
撮影日/平成21年5月31日
Picture Date
May 31, 2009



下絵を持ってこい!



 昨日、ねぶた製作のアシスタントを務める伊藤さんが、北村氏に1枚のねぶたの『下絵』を持ってきて見せていた。それが、本日のトップに掲載した『写真1』である。
  昼寝を終えて起き上がるなり、伊藤さんの絵を目にした北村氏は、「ん・・・70点!」と開口一番、評価を下した。この70点とは果たして良いということなのだろうか・・・?と皆が次の言葉を待った。「ワでも100点ということはね!(私自身が描いても、100点という点数は与えられない!)」ということだから、最高点に近い評価らしい。
  評価の後には、どこをどうすれば良いのかを鉛筆で描き、具体的な指示を下す。そして、「別の絵でなく、この絵をもう一度直して持ってこい!数こなさねばまいねんだね。ワでも同じ絵、三枚も書くことあるはんでな」と語り、「実際に色を塗ってみろ。色塗れば、悪いところが見えてくる」と言葉を締めくくった。
  ねぶたの骨組みや紙貼り、そして色塗りに加わり、ねぶたを勉強したいという人間は多いが、こうして伊藤さんのように、『下絵』を描き持ってきて、ましてや酷評されるかも解らないのに関わらず、皆の前で見せるという人間はとても少ない。それだけに、北村氏の伊藤さんへの愛情が伝わってくる数々の言葉を聞き、彼が羨ましくも思えた瞬間であった。
  画家としての才能、大工としての手先の器用さ、そして作家としての想像力がねぶた師には要求される。それらの才能を兼ね備え、第二の北村隆になれる才覚がある人間というのは、なかなか現れないというのが現状なのだ。

  この文面を読んだ方の中にも、「私も北村氏と共に、ねぶた製作に加わってみたい」と思っている方も多いに違いない。しかし、自分には『下絵』を描く才能がない・・・という方も居るだろう。
 そんな方は、どうだろう。まず、ねぶたの製作現場に足を運んでみるのも良いのではないだろうか。見学した上で、最初はアシスタントとして仕事を手伝ってみては。その上で、本当にねぶた師になりたいとの決意ができたら、『下絵』を持って来て、改めて北村氏の指示を仰ぐというのも手ではないだろうか。
 しかし、直接ねぶた小屋に出向き、「見学させて下さい」というのも、結構勇気がいるものだ。
 でも安心して下され。そんな気弱な方は、一度、『北村会』に入会されてみるのも手というものだ。『入会特典』の欄には、『会員証の提示により、北村隆制作中のねぶたを見学できます。』とある。私のHPにて写真だけを見ているのと、実際に現場でその空気や緊迫感を感じるのとでは、雲泥の差があるというものだ。
 現実問題として、長年、ねぶた製作に携わってきた人間でさえ、『ねぶた大賞』を三連覇している北村氏のねぶた作りに、驚かされるらしい。
  今年から製作している本日の写真に写る『に組』の人間でさえ、北村氏の製作の早さとその技法に、唖然としていたほどである。「これが青森のねぶた師の作りなんだな・・・!」と、口を揃えて感嘆し、言い放つ。
「本当にねぶたが巧くなりてんだば、自己流でだばまいねんだ。人さ付いで覚ねば!(本当にねぶた作りが巧くなりたいのなら、自己流では駄目で、師匠に付いて覚えることが大切なんだ!)」
 北村氏が熱っぽく、常に口にしている言葉だ。
「プライドを捨てて来い。そせば、ワは(私は)なんぼでも教えでやる!(いくらでも教えてやる!)」
 それが北村隆という、日本一のねぶた師の本音であり、齢61才となった男の渇望でもあるのだから。


写真2 本日も作業の大半は、火消しが持つ纏の製作に向けられた。
写真3 纏の馬簾(ばれん)の部分を、木材を接合し、作ってゆく。 
写真4 接合部は金属で結ばれ、重さを軽減し、しかも強度を持たせているのだ。
写真5 できあがった馬簾(ばれん)を、本体に差し込む。
写真6 接合部は狭くなるため、こんな具合だ。
写真7 馬簾(ばれん)の付け具合が変になったらしい。笑いが起こる。
写真8 馬簾(ばれん)は一本一本、角度と伸びる方向が調整されている。それがまた大変なのだ。
写真9 これがその接合部に使われている金属。『サンワドー』の値札が貼られたビニール袋に入っておりました。
写真10 馬簾(ばれん)の角度を調節する北村氏。
写真11 角度が決まったら、今度は位置を固定する。
写真12 皆が馬簾(ばれん)の調節をしている時に、北村氏は一人、火消しの髪の毛の製作に没頭する。
写真13
写真14 アシスタントは馬簾(ばれん)の木材を切り、北村氏は髪の毛の角度を微妙に変えている。
写真15 微妙に曲がる馬簾(ばれん)の接合部にも、細心の注意が必要なのだ。
写真16
写真17 アシスタントの三好さんによって、整理整頓された細切れの木材。捨てないためのエコな努力が、この小屋でも展開されている。
写真18 昨日は日曜日ということもあり、『に組』の方々が大挙し見学していた。
写真19 髪の毛の調整をしては・・・
写真20 遠目から確認するのだ。
写真21 インパクトが交差する作業現場。
写真23 「もっと早く、金具を使えば良かった・・・」と北村氏は愚痴を言っていた。木材だけの時とは、作業効率にも雲泥の差がある。
写真24 強度を増すために、次々に火消し男に木材が注ぎ込まれる。中心部は、金具では駄目なのだ。
写真25 木材を差し込んだら、その木材をビスで固定してゆく。
写真26
写真27 ステップという釘で、木材と針金を固定している北村氏。
写真28 ここからは、『青森山田学園』の小屋の様子。既に前部のねぶたの紙貼りは完成し、送りねぶたの紙貼りも最後の面貼りに入っていた。
写真29 解らない所は、最古参の長崎さんの指示を仰ぐ。
写真30 この送りねぶたも、独特な形をしている。
写真31 送りねぶたの向かって右側には、観音様と蓮の花が作られていた。
写真32 観音様は、前田さんの担当だ。「御利益があるんじゃないですか?」と尋ねると、
「そうだね。宝くじでも買おうかしら・・・。そんな御利益じゃないわよね」と笑っていた。
写真33
写真34
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写真36 この日の作業は、終わり。明日はいよいよ完成だ。
写真37 『ヤマト運輸』の小屋では、送りねぶたの配線作業が佳境を迎えていた。
写真38 ここからは再び『に組・東芝』の小屋の様子。
火消し男の右足を設えている様子。
写真39 木材を重ね、補強してゆく。この足は、ねぶたの台座から大きく前に出る部分である。
写真40 針金と木材だらけで外観はまだ解りづらいが、火消し男は、確実に完成に近づきつつある。
 
 
 
 
使用カメラ
撮影カメラ
EOS 5D MarkU