青森ねぶた2009 Vol.30  〜 シリーズ 昨日[5月26日]のねぶた小屋 vol.23 〜
写真1 紙貼りの女性陣の中では、最もベテランの長崎さんが、朝比奈像の面を手漉きの和紙で貼ってゆく。
  本日は、『青森山田学園』の朝比奈像の面貼りの様子と、二日目に入った『に組・東芝』の骨組みの製作の様子をお届けしたい。
  殆どのねぶた師は、顔も身体も同じ紙で紙貼り作業を指示するようだが、北村隆氏の場合は違っている。顔だけには、手漉きの和紙を使用するのだ。
  この和紙、実は50年も前に、北村隆氏の師匠でもある北川啓三氏から譲り受けた貴重な品であるという。
『写真2』にて、普通の紙と比べると解ると思うが、手漉きだけあり色は純白ではなく薄いベージュであり、所々に50年を経た証でもある黴などによる染みができているのだ。厚さも均等ではなく(写真3)、手触りも漂白された普通の養子に比べると、明らかにざらざらとしていた。紙貼りの女性陣の中で、最古参の長崎さんによると、この紙を使うと、色を塗った際の色乗りや色彩感が違うらしい。このように、面に手漉き和紙を使っているのは、おそらく北村隆氏と弟の明氏だけだとのことだった。なるほど、この和紙がこれまでの名作ねぶたの表情を支えてきていたのだと、感慨深くなってしまった。正に師匠の『ねぶた魂』と共に、素材の用紙までも、弟子である北村氏は受け継いでいたのだ。

撮影日/平成21年5月26日
Picture Date
May 26, 2009

師匠から受け継いだ技と
手漉き和紙

「もう残り少なくなって来てるのさ」と北村氏の奥さんが語ってくれたように、既に在庫枚数も底をつきかけているという。五十年も前の品であるため、この和紙を作った職人も既に他界しており、同じ物は二度と手に入ることはないという。
「もしなくなったら、どうするんですか?他の手漉き和紙を買って使うんですか?」と奥さんに問いかけたが、「さあ、どうするんでしょうね・・・」と笑って首を傾げるだけだった。このことを北村氏に問いかけようとも思ったが、なにか空恐ろしい気がし、未だに答えを聞けぬままである。
「この紙は、雨の日にはくたっとなって、なかなか貼りづらいのさ。天気が良くなければ、面貼りは駄目だのさ」と前出の長崎さんは語ってくれた。「所々に染みがあってさ、それをよげで(それを省いて)使わねばまいねんだよ。何十年も前の品だもの。人間ど同じさ。人間も年を取れば、だんだん、あちこちさ染みが出てくるべ」
 撮影する私の前で、そんな話をしてくれた長崎さんの言葉に、周囲に居た紙貼りの女性からも笑いが漏れてきていた。
 紙貼り一つにしても、師弟の連綿たる絆がある『ねぶた』というものの、奥深さを改めて感じていた。

  一方、一昨日から骨組みの製作が始まった『に組・東芝』の『男伊達と不動明』は、向かって右の座す火消しの男は、仕事に取りかかった一昨日に定位置に置く作業を終えて、昨日は向かって左に鎮座する『不動明王』の製作に入った。
「昨日、土台作っていたのに、もうこったらに(こんなに)できたのが!?」と、『に組』関係者が驚くスピードで製作は進んでいる。(写真26〜)


写真2 上が50年の時を経た手漉き和紙。下が現在、ねぶた全体の紙貼りに使用している紙だ。
写真3 50年前の手漉き和紙だけあり、染みが所々にあり、厚さも均等ではない。 
写真4 さあ、手漉き和紙での面貼りが始まったぞ。
写真5 和紙を手に取ったら、最初にすることは・・・。
写真6 染みがある場所とない場所とを細かくチェックしてから貼らねばならないのだ。
写真7 ボンドで貼り付けたら、型に沿って切り抜く。
写真8
写真9
写真10 こちらは閻魔大王像。面貼りが完全に終わろうとしている。
写真11 墨描きもされていないまっさらな状態でも、既に骨組み自体が威圧感がある。
写真12
写真13 長崎さんの作業は、手早く進む。
写真14
写真15
写真16
写真17
写真18 んん・・・!ちょっと失敗したかな??
写真19
上・写真20 / 下・写真21
写真22
写真23
写真24 あと少しで、この面も完成だ。
写真25 ここまでが、昨日の『青森山田学園』の小屋の様子。
写真26 ここからは、『に組・東芝』の小屋の様子。月曜日に引き続き、向かって左に座す『不動明王』のねぶたの台座を製作する様子。
写真27 木枠を縦横斜めと組んでゆく。
写真28 上へ上へと重ねて行く。
写真29 最上部でビスを打ち込めば、土台の完成。
写真30 既に不動明王の頭のパーツが準備されていた。
写真31 不動明王の頭に軸となる木材を差し込み、ステップと呼ばれる釘で固定させる。

写真32 不動明王の像を、実際に定位置に立ててみる。

写真33 位置が決まったら、仮の止めに入る。
写真34 下絵と比べ、常に位置関係をチェックする。
写真35 不動明王が手に持つ剣を準備する北村氏。
写真36 不動明王の腕や足のパーツを取り付ける準備もする。
 上・写真37 不動明王の腕を身体に取り付ける様子。 / 下・写真38 そして実際に不動明王の手に剣を握らせてみる。
写真39 位置を指示する北村氏。こんな具合に椅子に座って指示するのは珍しい。ひと月余り、1日の休日もとらずに働いてきて疲れている様子だ。
写真40 不動明王の剣が長すぎたな・・・。
写真41 不動明王の足を取り付け、この日の作業は、いつもよりはかなり早めの午後六時に終了した。
 
 
 
 
使用カメラ
撮影カメラ
EOS 5D MarkU