青森ねぶた2009 Vol.9  〜 ヤマト運輸ねぶたの下絵 and シリーズ 昨日のねぶた小屋 vol.2 〜
 本日は『ヤマト運輸ねぶた実行委員会』の下絵と、昨日から始まった『シリーズ/昨日のねぶた小屋』の二日目をお届けしたい。
  既に『北村隆 公式ウェブサイト』や『夏響会』のHPで、『ヤマト運輸ねぶた実行委員会』の下絵は公開されているので、詳しい説明は、そちらを参照して頂ければと思う。私のサイトに掲載している写真は、既に北村隆氏が描き上げ、額に入れてしまったものをガラス越しに接写させて貰い、それを掲載したものである。
  これで今年の北村隆氏の制作する三台のねぶたの下絵はすべて公開したことになるが、他にまだ『青森山田学園』の『送りねぶた』の下絵など、未公開の映像が多少残っているが、近いうちに総てをサイトに掲載する予定なので、ご期待頂ければ光栄である。こちらは、北村氏自身が「面描きを撮らせるのは、あんたが初めてだ」と仰って下さったように、北村ねぶたの制作関係者以外の方(制作関係者でも観たことがない写真かも知れません)は、初めて眼にするに違いないという非常に珍しい写真群で構成されているものだ。
撮影日/平成21年1月20日と5月3日
Picture Date
January 20, 2009 and May 3

これが『青森ねぶた』の下絵だ!
〜3〜
そして昨日の『北村隆ねぶた』の
進捗状況です!

 さて、昨日の『ねぶた小屋』の状況だが、前日に閻魔大王が開帳したお経(観音経)の針金での製作が主になったものに、強度を加えるための木材の投入が行われた。(写真10と11)
  続いて、閻魔大王の髪の毛のパーツの装着(写真12)と、閻魔大王の手によって隠れてしまった青鬼の顔の方角や位置の移動(写真16)が行われた。続いて大変だったのが、右手の取り付けだが、遠近法によって作られた右手のパーツの手首が太すぎて、サイズを二回りほど小さくする作業が行われた。(写真18と19)
  こうして一日が終わろうとした午後6時過ぎの話である。
「これだば、主役が死んで待ってる」と北村氏が言い出した。主役とは、向かって右に位置する『朝比奈三郎義秀』のことである。なるほど、観ると閻魔大王のサイズが大きすぎて、朝比奈像が奥に沈んだ感がある。
  すると北村氏は、「あど、10センチ(朝比奈像)、前に出すべ」と言い出した。
  私は正直驚いた。10センチと言っても、既にねぶた本体の重量は7〜8百キロを超えているだろう。その本体を、たかだか10センチ前に出してどうなるというのだ、と思ったからである。
  しかし、「え!?今更移動ですか?」と感じたのは私だけのようで、助手や弟子たちスタッフは手慣れた様子で、土台と朝比奈像を繋ぐ木枠を切り離し始めた。北村隆氏自身も、朝比奈像と閻魔大王を結ぶ、閻魔大王が握る錫杖の針金と木材を切断し始めたのである。
  そうして、数分後には、ねぶたを移動すべく、全員が朝比奈像に張り付いた。その時である。
「カメラマンも、カメラ置いて」と北村氏が微笑んだ。「えっ!?私も手伝うんですか!?」と声を発する間もなく、私はカメラを置いて朝比奈像の木枠に手をかけた。
 北村氏の「いち、にの、さん!」との声で、全員が木枠を持ち上げ、前に引っ張る。色んな針金が交差し、木枠もぶつかって、容易には動かなかったが、それでも何とか朝比奈像は10センチどころではなく、15センチほど前に移動した。
 するとどうだろう。さきほどの朝比奈像とは比べものにならないほどに、主役が主役たる存在を訴えかけてきたではないか!
「おぉ!ぜんぜん違う!鬼(朝比奈三郎義秀が打ち払った逆さの黄色の鬼)も前に出て来たし!」と感嘆の声を上げると、北村氏は、「こったごと、むったどやってるんだ。むったど!(こんなこと、いつもやってるんだ、いつも!)」と私に微笑んでみせた。
 なるほど、“むったど”やっているのであれば、迅速なスタッフの動きも理解できる。しかし・・・。
「普通のねぶた師さんは、寸法が8メートルなら、7メートル50センチで作るのね。でもウチのお父さんは、寸法いっぱいに作るのサ。だから、寸法を測りに来る人に、目を付けられてるの」と、北村隆氏の奥様が仰っていたように、ここまでミリ単位で執着しなければ、良い物は決してできないということだろう。いや、こだわるからこそ、良い物を作ろうという毎年の気迫が、他のねぶた師とは違うのかも知れない・・・。
 こうして総ての作業が終わったのは、午後七時近かった。
 あっぱれ!本日は北村隆ねぶたの、その最たるこだわりを垣間見せて貰った気がした。
 勿論、これは私の主観だが、ねぶたの作り方を学びたいのなら、より難しいねぶた作りに常に挑戦し続ける北村氏のもとで1年学べば、他のねぶた師のもとで10年学ぶよりも有意義な時間を過ごせると、私には断言できる気がする。
 そして・・・。
 少しだけ、腰の古傷が痛んだ夜でもあった・・・。何か重い物でも、持ち上げたかしらん・・・??

写真1
写真2 生首が、泪を流しているのが判るだろうか?
写真3
写真4
写真5
写真6
写真7
写真8
昨日[2009年5月3日]のねぶた小屋
写真9 常に下絵で構図の確認をする北村隆氏。それゆえに、下絵は最も大切なものなのだ。
写真10 午前中の多くの時間が、木材による骨組みの固定に使われた。
写真11 北村氏の指示により、閻魔大王の身体に木材が注ぎ込まれ、運行の際も動かないように固定されてゆく。
写真12 続くは、閻魔大王の髪の毛を取り付ける。
写真13 北村隆のねぶた小屋は、ねぶたが前にせり出しているために、とても手狭だ。その証拠がこれ。
小屋の窓を開けてでないと、木材を組むことができない状況にもなってしまう。おそらく、他のねぶた小屋では考えられないことだろう。
写真14 木材を差し込んだら、次々と固定してゆく。
写真15 今度は、お経を握る閻魔大王の右手の取り付けに入る。
写真16 閻魔大王の手(画面手前)の位置を移動したことで、向かって左横の鬼の位置も微妙に変えてゆく。
写真17 鬼の手の爪は、こんな風。まるで現代女性のネールアートだ。
写真18 閻魔大王の右腕が、当初の予想よりも大きいことが解り、全員でサイズを小さくし(腕の太さを細めに修正)始めた。
写真19 閻魔大王の腕を正面から見たら、こんな風。いや、正面でもひっくり返されてはいるが・・・。
写真20 台座から2メートル30センチの位置にチョークが引かれている。
この位置から1ミリでも前に出ると、規定の寸法をはみだしてしまうという意味なのだ。
写真21 鬼の腕が、線からはみだしていないかを、機材を使い確認している様子。
写真でははみ出していたために、北村隆氏は、鬼の腕をサイズに合うように強引に折り曲げ、
「これで、えがべ(これで良いだろう)」と笑ってみせた。
まさに、ミリ単位の寸法との闘いが連日繰り広げられているのだ。
 
 
 
使用カメラ
撮影カメラ
EOS 5D MarkU