2009年 暖冬の八甲田に樹氷を観た!1 暖冬の樹氷
写真1 暖冬の影響で樹氷は細いが、この日はどこまでも空が蒼かった!
撮影日/平成21年1月28日
Picture Date
January, 28 2009
八甲田の樹氷 1
 青森県は北海道と並び、大相撲力士が多い県として知られているが、不思議に故郷の名山でもある『八甲田山』という四股名(しこな)を付ける人間はいない。
  津軽富士として有名な岩木山(いわきさん)とて、『なぜに津軽の名峰を配する相撲取りがでないのか?』という疑問の声に押され、最近になり『岩木山(いわきやま)』として登場した経緯がある。
  これには古来より霊峰として津軽人の崇拝の対象となった独立峰の名を、たとえ四股名であっても、『いち人間が付けることなど不遜』であるとの認識も強くあってのことだと思う。そして名を付けたは良いが、成績が振るわなかったら『岩木山』の名を汚すことにもなりかねない。現在の力士としての『岩木山』の成績は、優れて良いとは云えないが、それなりに努力しているように感じられる。
  それでは、『日本百名山』にも数えられ、青森県を代表する、もう一つの名山『八甲田山』の名は付けられることはないのだろうか。
  八甲田山という名を有名にしたのは、作家・新田次郎が著した『八甲田山死の彷徨』を原作とする映画『八甲田山 (1977年公開』)の影響が大きいだろう。

 当時、25億という日本映画史上歴代一位という興行収入を弾き出し、「天は我を見放した!」と悶絶する『青森歩兵第五連隊/神田大尉』役を演じた北大路欣也の台詞が流行語にもなった。1902年(明治35年)の厳寒期である1月23日に強行された八甲田への雪中行軍の演習中に、210名の参加者の内、199名が凍死するという世界でも類のない大惨事に見舞われた。
  その訃報が世界に伝えられると、「スキーがあったら、この惨劇は起こらなかっただろう」として、ノルウェー政府から、哀悼の書簡と共に二台のスキーが贈られたのだが、当時は使用方法が解らず、そのまま物置に放置されたままであったらしい。皮肉にも、これが、日本にスキーが渡ってきたルーツにもなっている。
  という忌まわしい事件の影響やイメージもあってか、さすがに『八甲田山(はっこうだやま)』という四股名を付ける力士は皆無なのだろうとも感じられた。そして、もう一つ理由があるようにも思える。それは、『八甲田山』とは正確には主峰・八甲田大岳(標高1,585m)を頂点とし、幾つもの似たような高さの山々が連座した山系であり、岩木山のような独立峰ではないことが“どんぐりの背比べ”的な、つまりは“似たようなひ弱な力士”をイメージさせ、相撲取りとしては致命的な“力強い雰囲気が出にくい”という難点も備えているからだろう。
『八の(数多の)甲(甲冑)状の峰と、山上に多くの田代(湿原帯)がある』とのことで、この名が付けられたらしいが、最も積雪量が多い笠松峠付近では、一晩に1メートル近い豪雪に見舞われることもあり、一年の平均気温が10℃台のこの山系には、本州であるにも関わらず、まるで北海道のような荒涼とした、異次元の景観を望むことができる。
  私が撮影に訪れた1月28日は、一年の内に数えるほどしかない厳寒期での快晴に恵まれ、PLフィルターなしでも、掲載した写真のような蒼いオゾン層が天空に輝き、まるで別世界に脚を踏み込んだかのような幻想世界の中で、撮影を十二分に味わうことができた。
  パウダースノーの一粒一粒が至る所で陽光に輝き(その写真は、特集『雪紋のワルツ』に掲載予定)、デジタルカメラの液晶画面が、肉眼で確認できないほどに、周辺の光が乱反射し眩しすぎた。
  私はスキーを持っていなかったので、八甲田ロープウェイが到着する、標高1324mの田茂萢岳(たもやちだけ)から、夏場なら徒歩で3分以内の場所で断続的に撮影を続けたのだが、眼下には遠く青森市内を眺めることができたし、もし、107年前の雪中行軍が、このような天候の下で行われたのであれば、歴史は確実に変わっていただろうとも思えた。確かに、新雪と吹きだまりに足をすくわれ、しばし身動きできなくなったことも一度や二度ではないが、そこを抜け出た頃には、厚着した背中や額には汗が滲んでいるのが解るほどの、真冬にしては心地よい陽気だった。
  しかし、これも近年問題視されている『温暖化』の影響なのだろうか。二月になろうとしているこの日、本来なら肥えた“逆さ大型エビ天”になっていなければならない樹氷(モンスター)のあちこちからは、アオモリトドマツの枝葉が覗き、地元の人間によれば、「まるで春先の三月の樹氷のようだ」との嘆きも聴かれた。
  宇宙から地球を観た人間は、その眺望に、人生観が変わると言われている。私は、地上より僅か千三百メートルほどの山の上でさえ、周囲の景観に、そして巷の遠望に心を洗われる思いがした。
  日本に、このような絶景を堪能できる大自然が、まだまだ残っていることを、一人でも多くの国民が慈しみ、大切に守り続けて欲しいと願う。

写真2
写真3 I want to talk with you!(儂は、あんたと話がしたいんじゃ!)
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写真9 これは変わった形の樹氷・・・?あっ、カメラを持った私でした・・・(^^;)
写真10
 
使用カメラ
撮影カメラ
EOS Kiss X2 (EOS 450D)