温暖化なら更に熱い夏にしようぜ!青森ねぶた 29 〔ちょいと重いぜ!一挙25枚を掲載!!〕

『ヤマト運輸ねぶた実行委員会』による今年の山車は、『青森山田学園』と列び、ねぶた師・北村隆氏が制作した『花和尚・魯智深(かおしょう・ろちしん)』である。
  単純善良な永遠のヒーロー・花和尚こと魯智深が、魯智深の義兄弟でもある林冲を殺そうとする役人に、魯智深自身が錫杖を手に助っ人に入るシーンを再現している。向かって左が斧を握る役人、そして右が魯智深だ。
 この山車の第一印象は、役人が握る、山車の前部に突き出された棍棒に付いた斧の迫力である。(『写真16』)
『ヤマト運輸ねぶた実行委員会』は、3日からの参加であったが、当日も降雨が予想されたため、ビニールシートが被せられた。そのビニールの重さから人形を守るため、山車の前部に木枠(『写真1』を参照)が組まれたのだが、その作業を傍らで見ていた私は、改めて斧の大きさを目の当たりにしていた。

撮影日/平成20年8月3日〜6日
Taking a picture day
August, 3rd through
August, 6th, 2008
ヤマト運輸ねぶた実行委員会
〜下手なショットも
数撮りゃ当たる!〜

 そして、その斧の柄を握り、恫喝する魯智深と役人の睥睨が、何ともユーモラスでもある。ユーモラスとしたのは、よおく観ると、魯智深に柄を握られた役人は、左端へと身体ごと吹っ飛ばされ、脚が虚空に浮き上がっている。浮き上がった爪先は、ねぶたの規定サイズ内に収められており、そのサイズを超えると減点対象として、6日の夜に発表される各賞に影響が出てしまう。更に、『写真13』で観ると解ると思うが、よくこのような構図を考え、規定サイズぎりぎりでねぶたを作ってしまえるものだと、またまた制作者の北村隆氏の実力を再認識してしまう。案の定、6日に発表された山車としての評価は、同じく北村氏制作の『山田学園/忠臣 児島高徳と范蠡(ちゅうしん こじまたかのりとはんれい)』に次ぐ第二位。総合評価では残念ながら第五位となり、『観光コンベンション協会会長賞』にとどまってしまったが(本来の第二位であれば『知事賞』だった)、撮っていても、山車の迫力が違った。左右に配置された魯智深が錫杖で打ちつけたという松が、まるで鳥が緑色の両翼を羽ばたかせるかのように、山車に更なるボリュームを与えている。昔は蝋燭の炎でねぶたを照らしていたため、燃えにくく加工しやすい竹を使ったが、現在は針金と和紙という素材で、よくもこれほどまでに精巧な人形が作られるものだと関心してしまう。(骨の部分は角材が使用されている)
 いつもの年ならば、高評価のねぶたに与えられる『海上運行』の栄誉までは、なかなか辿りつけなかった『ヤマト運輸ねぶた実行委員会』だが、北村隆氏に山車を発注したことにより、総合点の60%を占める山車の評価に辛くも助けられた形で、今年は海へと繰り出すことができたと言っても良い。それだけに、今後の課題も残っていると言えるだろう。(後の25%が『運行・跳人』、残りの15%が『囃子』による評価が加味されたものが総合点となる。)

 ねぶたを撮影するカメラマンの誰でもがそうするように、私も、ねぶた小屋が集う『ラッセランド』にて出陣を待つねぶた山車を一通り観て廻ってから、どの山車が本日出陣し、そしてどの山車を重点的に撮影するかを予め決めてゆく。この時、北村隆氏と、弟の北村蓮明氏、そして竹浪比呂央氏のねぶただけは、撮り逃がしのないように殊に留意する。それは、この三人が制作したねぶたが、6日に発表される『ねぶた大賞』を始め、各賞を受賞する可能性が一番高いからである。
『写真1』に掲載したように、ビニールを被ったねぶたは、絵としては美しいとは言えない。だから、5日6日と、私は撮り逃がしていた山車を中心に撮影を開始した。殊に、先の三者のねぶただけは逃すまいと、シャッターを押し続ける。中でも、北村隆氏のねぶただけは、しつこいほどに追いかけて撮影を続けた。その映像群が、本日掲載した写真である。
  ねぶたが止まっている映像は、デジカメが普及した現在では、誰にでも簡単に撮影できる。ずぶの素人でも、右にウインカーを出して左折してしまうおばちゃまにでも、携帯電話のデジカメで、綺麗に写せている。しかし、『写真17』『写真23』『写真25』などの、回転を続けるねぶたを撮ることは、ある程度カメラを扱える
熟練者でなければ、綺麗に撮影することはできない。
  ねぶたを回転させるのは、ねぶたの進行を司る『扇子持ち』(『写真19』)と呼ばれる人間が決める。その扇子持ちの微妙な合図で、ねぶたが回り始めた刹那に、その回転が速いのか遅いのかを瞬時に観てとり、カメラのシャッター速度を設定し、ストロボの光量も調節し、覗いたフレームの四方に気を配って構図を決め、カメラを支える身体を固め自らが人間三脚となり、スローシャッターで撮影するのである。
 立っていてはこの人間三脚の役割はできない。最低でもしゃがみ込み(後方で観ている観光客のために、じゃまにならないように配慮する意味合いもある)、片ひざを路面について身体を安定させる。
 身体が大きい私は汗かきということもあり、夏場の暑い盛りなので、半ズボンで撮影している。それゆえ、撮影が終わると、いつも片膝に路面の砂や排気ガス、土埃などが付着し、真っ黒に変色している。この黒ずみは、驚いたことに風呂に入っても、一週間は取れない。酷い時には、膝から出血していることもあった。それだけ、頻繁に膝を路面に付けていることになるのだが、“下手なショットも数撮りゃ当たる!”との信念で、同じカットを何度も何度も写し続けることが、ねぶた撮影では一番大切な心得なのかも知れない。
  カラー写真では失敗かと思われた『写真9』も、こうしてモノクロ映像にしてみると、良い雰囲気を出して見えることもある。
『写真23』のように、関係者さえも被写体の一部として、構図の中に取り込んでしまえば、これはこれで面白い写真になるから不思議だ。
 迫力あるねぶたの山車を、迫力あるまま静止画とするのは容易ではないが、どこまでその迫力に肉薄できるのかと、毎年挑戦し続ける姿勢だけは、失いたくはないと思った。


写真1 今年の初陣を飾った8月3日は、颱風並の雨と風だった。
写真2 3日の運行は、囃子方もびしょぬれと言うより、ずぶ濡れ状態だった。
写真3 以下の写真は、晴天に恵まれた4日〜5日の写真である。
写真4
写真5
写真6 写真5はストロボをONで撮影したもの。そしてこの『写真6』は、故意にストロボをOFFで撮影したものだ。印象が全く違う。
写真7
写真8
写真9 画面右端に写る人影は、ねぶたの動きを指示する扇子持ちの姿。
写真10
写真11
写真12
写真13 横から見ると、斧が相当前に突き出ているのが解る。
写真14
上/写真15              下/写真16
写真17
写真18
写真19
写真20 扇子持ちが急いで水分の補給をする。ペットボトルを持ち歩いたら格好悪いもんで。
写真21
写真22
写真23
写真24 いつも、被写体になって下さり、ありがとうございます。
でも、身体の動きが速いので、なかなか構図が定まらず、撮影は大変だったりします。
写真25
 
使用機材
撮影カメラ
EOS-1D
使用レンズ
EF16-35mm
スピードライト580EXU/トランジスターパックE(Ni-Cd)