雅な津軽の夏 ねぷた/ねぶた祭の頃 5 〜青森ねぶた祭 1〜 〔6枚〕
写真1 ねぶたの顔を撮るには、やっぱりこれこれ!光間ズーム。
撮影日/平成17年8月3日〜8月4日
Picture Date
August, 3rd through August, 4th, 2005

ねぶたの撮影は難しい!?

 青森ねぶたの運行が、今年も8月の2日より始まった。
弘前ねぷたの項でも書いたが、毎年この季節になると心躍る気持ちとは裏腹に、陰鬱な気持ちが私を襲う。「あぁ、また撮影の苦労を背負う一週間が来たのだな・・・」という心痛にも似た感慨である。
  短い夏とはいえ、日中の気温が三十度を超える津軽でも最も暑いこの時期の撮影は、正直言って楽ではない。都会ほどのヒートアイランドにはならないまでも、咽るような熱帯夜が続く毎夜、六、七キロのカメラ機材を背負い、数キロの距離を移動しつつ一晩に五百枚もシャッターを切るのだから、冷房の行き届いたスタジオで撮影するのとは訳が違う。しかも動きが割合ゆったりとした弘前ねぷたとは違い、青森ねぷたの場合は、重さ4トンもある山車が縦横無尽に車道を右往左往する訳だから、油断をしていると山車や跳人(はねと)の進路を妨害し、結果大怪我や祭そのものの運行にも支障をきたす危険にも繋がる。実際に、浪花の『だんじり祭り』ほどではないにしろ、『ねぷた/ねぶた祭り』でも参加者に死傷者が出ている。 つまり、撮影者にとってさえも、体力不足や注意の散漫、気の緩みが命とりとなりかねないのだ。
 この祭りの撮影を、仕事と割り切ってしまうには、あまりにも割が悪いとも感じるのだが、それなのに、なぜ撮影に挑戦するのかと言えば、この一週間を『一年に一度の修行の場』と私自身が捉えているからである。 
 青森ねぶたの撮影は、体験した誰もが感じることだろうが、決して簡単ではない。撮影に際しては、場所の選定と構図、そして咄嗟の撮影タイミングの把握や細かな調整を必要とするストロボ・ワークが必須技術となるので、やはりある程度の場慣れと直感(臨機応変さ)、何よりも自らのカメラ技量が大切となり、この一年、どれだけ腕が上達したのか、あるいは下がったが試される場だとも言える。私自身、己の愚かさと腕のなさを痛感するのが、この一週間という訳なのである。
  ということで、『青森ねぶた』を撮影した第一日目(祭り三日目)は、さんざんなる結果となり、相当気落ちし、帰路についたという事実をお伝えしたい。レンズの選択の失敗、ストロボの光量ミス、シャッタースピードの選択ミス、構図の失敗、そして撮影場所と被写体の選定ミスと一切の長所をその1コマ1コマに感じとれなかったのである。帰路の電車の中では、『明日からの撮影を含め、これからのねぶた祭りの撮影を全て辞めてしまおうか…』と一度は決断したほど鬱状態となり、自暴自棄にも陥っていた。
  しかし、実家に帰宅後には、「いや、本日以上の失敗はもうないだろうから、明日は今日よりも良いものが撮れるだろう…」と気持ちを切り替え、翌昼には再び青森へと足を運んでいた。このような落胆と克己は、考えてみれば毎年ねぶた祭り期間中に強かれ弱かれ経験しており、実際に満足のゆく撮影ができたという気概は、夜間運行最終日の六日目にやっと感じることができる程度なのだ。『さあ、明日からはもっと良いものが撮れるぞ』、と感じた頃には既にねぶたの夜間運行は終わっており、この意気込みのまま、来年度のねぶたに挑んでは、また失敗を繰り返すといった具合である。
  であるから、このWEB SITEを御覧の皆さんの中には、「津軽海渡はずいぶんと偉そうなことを言ってるな。“鼻持ちならない奴”』と感じている人も少なからず居るだろうが、『そう強気にでも叫んでいないと、潰れてしまいそうな、自らの弱さを露呈している私』を、文面に感じて頂ければと思う。撮影は決して楽ではないし、津軽で育った私とて、失敗と失態の連続の上に更新を続けているのである。
  因みに、いわゆる『流し踊り』と呼ばれる『阿波踊り』や私が昨年撮影した『黒石よされ』などの夜祭の場合は、一定のリズムで移動し続けるために、ねぶたほどの撮影技量は必要としない。逆に言えば初心者が撮影し易いストロボを扱った被写体とも言えるが、これらを撮影する同じ腹積もりで『ねぶた祭り』に挑むと、とんでもない失敗を招いてしまう。撮影することの危険性という点でも難易度においても、動きが無尽に変化する『ねぶた祭り』は『流し踊り』の比ではなく、観光客として初めて『青森ねぶた』を観に来た人間が、突如ずば抜けたすばらしい写真が撮れてしまうほど甘くはない。日常生活において、特にアマチュアの場合は、これだけストロボを多用する機会も少ないだろうから、やはり現場で慣れ体得するしかないような気がする。

  進行するねぶたを詳細までブレなく写しこむには、60分の1秒以上のシャッタースピード(写真5)が最低条件であり、逆に回転するねぶたのブレを演出するためには、一気に15分の1秒以下へシャッタースピードを落とし撮影する機転が要求される。(ねぶたの回転速度にもよる)その際の注意点としては、スローシャッターに対応するため、カメラを構える身体をいち早く固定させ動かさないことである。(できればシャッター速度が遅くなれば遅くなるほど、ストロボ側での露出〔光量を強くする〕補正が必要。カメラ側の補正ではねぶたが明るく〔オーバー気味に〕写ってしまうのでノー・グッド)また跳人の動きを被写体ブレとして撮影するには更にスローのシャッタースピードを選択する必要があり、使用レンズの選択も経験から判断するしかない。(被写体を大きくぶらしたい場合は、勿論『手振れ補正機能』は解除すること。これを意外と忘れやすい。)
  今回の撮影に関わらず、毎年私が最も犯しやすかったミスは、露出補正をしたままの状態で、次の被写体を続けて撮ってしまうという初歩的なものである。突如、次々とシャッターチャンスが訪れる祭に於いては、思わず無我夢中で撮影するために、このような失敗を繰り返してしまうのだが、ミスを回避するために、私は今年から露出補正する度に声に出してカメラを指差し、『露出補正ィ!』と呟くことをし始めた。電車やトラックの運転手がよくやっているのを見かける俗に言う『指差し点呼』だが、こうすることで、補正したという事実がより鮮明に頭に残り、新しい被写体への咄嗟の対応にも、補正し直す癖がついたとも言える。特に二台三台のカメラを同時にぶら下げて撮影している人間は、このアナログ・ミスを犯し易いので、補正したら確実に元に戻しておくなどの、何らかの対処はぞれぞれがしている筈であろう。

  デジタル一眼レフが廉価版として各メーカーから次々と登場するに伴い、俄かカメラマンが多くなったと印象が、今年のねぶた運行を観ていて特に感じた。私が本格的にねぶたの撮影を始めた6年前とは雲泥の差である。シャッターを押したら、後は現像し終わるまでは結果を知ることができなかったフィルム・カメラとは違い、その場で撮影映像が確認できるデジカメの普及により、ねぶたが動いているにも関わらず、モニタで撮影結果を確認し、その進路を妨害するカメラマンも増えてしまった。いつの日か、プロ・アマ問わずカメラマンの中から大怪我をする人間が出ることで、撮影に何らかの規制がかかってしまうということも考えられなくもない。
  現段階では、ねぶたほど大規模で荒々しく、全国的にも高名、しかもテレビ中継されている割には、誰もが自由に沿道に出て撮影できる祭りは他にないとも言える。よくテレビで、『絶対に真似はしないで下さい』とのテロップが流れるバラエティー番組を見かけるが、慣れた人間と同じこと(撮影法)に挑むのには、やはりそれだけの下準備が必要であることだけは是非知っておいて貰いたいのだ。行楽というバラエティーが、自身のドキュメンタリーにもなり兼ねないのである。    


写真2 『ラッセラー、ラッセラー』と跳人が踊る。その花笠の光彩が、踊りと共に軌跡として写る。

写真2 日本を代表する世界企業『東芝』に組の囃子方。ばっちり決まっております!
 昔は『青森ねぶた』も、『弘前ねぷた』同様、各町内から募金を募って出陣していた。長屋の路地裏を徘徊し、「酒を出せや、食い物を出せや」の言葉が訛り、現在の「ラッセラーラッセラー」に変化したとされる。
『弘前ねぷた』も昭和の四十年代までは、祭が終わると岩木川にてねぷたや、ねぷたの張り紙を流すいわゆる『ねむた流し※』の習慣があったが、河川の汚染を理由に廃止された。 『青森ねぶた』も明治期の七日日には『堤川』にねぶたそのものを流し、五穀豊穣と家内安全を願っていた。
  当時から大人が化け人(ばけと)や跳人(はね)になり、自らが楽しむことに重点を置き、それだけにチンドン屋的な騒がしさと、関西人にも通じる“とことん目立とう精神”があったらしい。
※『ねむた流し』とは、夏場の暑さと披露のために起こる睡魔(青森では『眠い』を『ねむたい』と言う)を、農作業が滞るとしてそれを防ぐために、精霊流しの形をとり、ねぶた提灯を河に流したことを指す。
『青森ねぶた』がこれほどまでに大きく成長したのには、大人が楽しめるように、また観客を楽しませるために、山車が巨大化して行ったことも一つの要因だろう。 『青森ねぶた』は揃いの袢纏も凝った衣装が多い。金をかければ見栄えもする。見栄えもすれば、それだけ何かの『賞取り』に絡んでくる可能性も高い。何らかの『賞』を貰えば、宣伝効果も高いので、企業も金を出すという世界的な企業戦略(資本主義)の構造の中に没しているとも言えなくもない。それだけに『青森ねぶた』には『弘前』にはない“華やかさ”がある。

写真4 扇子持ちの合図と共に、回り始めるねぶた。ねぶた本体は多少露出オーバー気味となった。『ねぶた撮影の注意点』の文面を参照下さい。
写真5 廻りの一番良いところでシャッターを切る。
写真6 正装は花笠が必要なのだが、最近は気軽な衣装でねぶたを楽しむ若い人が増えてきた。
 
撮影データ
写真1
ISO 200 シャッタースピード 1/40秒 絞り値 F6.2
写真2
ISO 200 シャッタースピード 0.3秒 絞り値 F7.3 TTL
写真3
ISO 200 シャッタースピード 0.5秒 絞り値 F17 TTL
写真4
ISO 200 シャッタースピード 1/25秒 絞り値 F4.0 TTL
写真5
ISO 200 シャッタースピード 0.5秒 絞り値 F17 TTL
写真6
ISO 200 シャッタースピード 1/5秒 絞り値 F3.5 TTL
撮影カメラ
EOS-1D
使用レンズ
EF16-35mm/EF35-350mm
ストロボ
スピードライト550EX/トランジスターパックE(Ni-Cd)
使用ソフト
レタッチソフト
Photoshop CS(一部CS2を使用)
ロゴ製作ソフト
Illustrator CS/FIREWORKS MX2004
WEB製作ソフト
Dreamweaver MX2004
文章作成ソフト
一太郎2005+ATOK