※ このページは、2000-2004年まで続いたHP『津軽海渡のデジカメ紀行』に掲載していた写真や文面を、そのまま復刻させたものです。
   リンクは既に繋がっていないものが殆どであるため、その旨御了承下さい。
 
本日【2003年1月19日(日曜日)】の1枚の写真は!?
 
 
【2002年7月25日のスナップ 〜花火大会の下見〜】
 
 
  本日は6枚の写真を掲載致しました。


  昨年の7月25日、私は明後日の7月27日に行われる予定の隅田川花火大会の下見に出かけた。その折の話を、本日はしたいと思う。
 
  一昨年は、購入したてのミノルタDiMAGE 7で、同じ隅田の花火大会を撮影したのだが、その折は撮影場所の確保に遅れ、花火を見物する人垣に視野を塞がれ、さんざんな結果になってしまった(以下のURL参照)という轍を踏まえ、当日は朝から撮影場所の確保にでかけようと誓い、その下見に来たのである。

【ミノルタDiMAGE 7で撮った花火】
http://www.interq.or.jp/writer/kamakura/newpage010729.html

  関東でも最大級のこの花火大会には、隅田川の川沿いに100万人もの見物人が訪れるというから、その混みようも半端なものではない。
  それに伴い見物場所の確保も熾烈なもので、花火大会当日は、午後になって交通規制がかけられると、瞬く間に広い公道といえどビニールシートで覆われてしまう。
 
  ただ単に花火の雄大さを楽しむというのであれば、花火大会が始まる午後の7時近くに現場に到着しても、ある程度地理を知っていればさほど苦にはならないのだが、こと三脚にカメラを設え、スローシャッターを切り本格的に撮影したいとなれば話は変わってくる。
  撮影場所を前もって選び、三脚を立てた際に、ファインダー内に邪魔な被写体が写りこまない場所、並びに自分の後ろの観客の視界を遮らない、つまり野次を浴びない場所を確保する必要があった。
  打ちあがる花火の光跡を入れ、しかも爆発した瞬間の映像を撮影するとなると、それなりに撮影場所も限られてくる。

  隅田川の場合は、第一会場と第二会場の二箇所で打ち上げが行われるが、花火師による花火コンクールが行われているのは第一会場であり、打ち上げの開始時刻も第一の方が早い。それだけ撮影時間も多くなり、よりシャッターチャンスに恵まれるので、私は最初から第一会場付近で、撮影に適した場所を、下見に来たこの日も探し始めた。

  花火大会が行われる二日前であるが、早いものではもう場所取りの為に陣取る若者の姿も見受けられた。
  場所取り用のシートは、本日の段階で貼り付けても、時折見回りにやってくる係員や警官によって剥がされてしまう。となると一番確かなのは、彼らのような場所取りであり、私がもし花火撮影に人生をかけたプロカメラマンであり、どうしても最良の撮影場所を確保したいというのであれば、彼らのような一見して学生風の若者たちに、一人日当1万円ほどで二日ほど前から場所取りを頼むという方法が最善なのかも知れないと思った。

  私は念のために、地元の人間らしき男性に、どこで撮影したら良いのかを尋ねてみた。
  しかし、彼は見物には適した場所は知っていても、撮影に適した場所を知らないらしい。つまり、観客の目線とカメラマンの目線とでは、見物に選ぶ場所も角度も違っているのである。
  だからと言って、彼の話が何の足しにもならなかったかという訳でもない。寧ろ非常に参考になっていた。
  やがて彼がぽつりと口にした言葉に私は驚き、矢継ぎ早に問い掛けていたのである。
「ホームレスに場所取りを頼めるんですか?そんなことを彼らがやってくれるんですか?一体幾らくらいで??」

  考えてみればそうだろう。
  下見に訪れたこの日も、ブルーシートで作られた彼らの小屋が幾つも川沿いに点在していた。
  自分たちにしてみれば、たとえ違法ではあっても小屋の前は自らの庭同然である。場所とりだって、簡単にできる筈である。
 
  その後、私は第一会場となる付近を一周し、めぼしい撮影ポイントと、そのポイントに近いホームレスを捜して歩いた。
  そんな中に、小屋の品々を片付けている一人の老人を発見し、声をかけてみる。
「花火大会があるから、小屋を当日までに片付けてくれって若い婦警さんに叱られてよ。そのための後片付けをしてるんだ」という。
  私も件の場所取りのことをそれとなくたずねてみる。「ここの場所取りは、何時くらいから来れば確保できるんでしょうかね?」と。
  すると彼は目を輝かせ、「なんだったら、俺がとっておいてやるか?」と切り出してきた。
  値段を交渉すると、「1000円で良い」という。団体であれば、1シート何人着ても4000円でいいとも言っていた。
 
  時は7月の下旬。真夏の日中から場所とりのために現場にやってきて、その後数時間も直射日光に晒され続け、大会開始を待つのはとても辛いことである。暑さと脱水症状のために頭は朦朧とし、最悪撮影に集中できる体ではなくなってしまう可能性の方が高い。
  だったら彼に場所取りを頼み、花火大会直前にこの場所にやってきて撮影に集中することを選んだほうが遥かに得策であった。
  私は彼に1000円を渡し、当日は6時半までに来ることを告げ、場所取りを頼んだ。
  雨天の場合は来週に順延し場所を確保してもらう。もしその来週が雨で中止になった場合は、花火大会も中止になるから、渡した1000円はいらないという契約をしたのである。

  そのことが逆に良かったことを悟ったのは、花火大会当日になってからである。
  私はクーラーによる夏風邪で37℃を超える微熱と、体調不良で朝から動ける状態になかった。
  もしも彼に場所取りを頼んでいなければ、今回の撮影は見送ろうと思ったほどである。

『浅草』駅から私が場所取りを頼んだ場所までは、普段なら徒歩で15分ほどであった。
  しかし当日はやはり混雑が酷く、その場所にたどり着くまでに40分もの時間を要してしまった。
「もう来ないんじゃなかと思ってたよ」と老人は微笑んで、場所取りのためにブルーシートの上にばら撒いておいた縫い包みを片付け始めた。
  私が丁寧に老人と彼の仲間に頭を下げている様子を、側に陣取ったアベックが怪訝そうに下世話な笑みを浮かべ見詰めていたのが印象的でもあった。彼らの顔には、『決して私たちはこんな人たちの用意したシートには座りたくないわ』という蔑みが感じられ、その表情は私にも向けられたのである。
  だがやがて、私が大型の三脚を立て、1Dに望遠をセットし、並んでディマージュ7を設え始めると、その視線が驚きのまなざしに変わって行ったことも目に焼きついている。

  ホームレスの彼らは、私の撮影に極力協力してくれた。目の前の防護ネットが邪魔だと感じた彼らは、率先して私が撮影しやすいようにネット網目を広げてくれたし、これまでの花火大会の思い出なども教えてくれた。
  彼らの一人は、競馬場で馬の飼育をしていたという。しかし、バブルが弾け、職を失い現在に至っているという。
「馬ってのは可愛いよ。ほんと可愛いんだ・・・」
  寒立馬を撮影し続けている私にも、彼らの気持ちはよおく解った。馬という不思議な縁が、彼らとの間を取り持ったのかも知れないとも感じた。

「また来年も(場所を)とっておいてやるからよ」
  彼らはそう微笑んで、私がお土産に買って行った焼き鳥とビールを頬張っていた。現金以外にも、このようなできたての食物の差し入れが何よりも嬉しいという。そしてこれが彼らが口にした、今日初めての食事であったらしい。

  私とて、重い病気をしたりすれば、いつ彼らの仲間入りをするか解らないという不安定な生活をしている。
  視界のどこかでは遠ざけてはいても、決して人事ではないと、その姿を容認して日々暮らしている気がする。

  以下のURLは、そんな彼らの尽力により確保できた場所で撮影した花火の映像である。
  彼らが使用した大型のブルーシートのお陰でレンズの前に立ちふさがる見物人の人影を気にすることなく、撮影に集中することができた。
  名前はここでは記せないが、今振り返っても、彼らに対しては、本当に感謝の気持ちで一杯である・・・。

※本日掲載した写真は、いつも通りの鮮やかな発色のIXY-D200の映像ではなくて、夕暮れ間近いどこかくすんだ色合いの映像となっているが、何か意図したという訳ではなく、いつもとは違ったソフトでリサイズしたためにこうなってしまったのである。シャープ効果が幾分弱めに設定してあったためと推測される。

【隅田川花火大会 T 〜花火が上がった!〜】
http://www.interq.or.jp/writer/tugaru/newpage020728.html

【隅田川花火大会 U 〜銀河へ捧ぐ〜】
http://www.interq.or.jp/writer/tugaru/newpage020729.html

【隅田川花火大会 V 〜生命の誕生〜】
http://www.interq.or.jp/writer/tugaru/newpage020730.html

【隅田川花火大会 W 〜クライマックス〜】
http://www.interq.or.jp/writer/tugaru/newpage020731.html

〔本日の写真1は営団地下鉄参宮橋駅構内で。写真2〜6は東京都台東区〜墨田区で撮影〕

撮影日〔2002年7月25日〕

※使用機材 Canon IXY-DIGITAL200
撮影されたJPEGファイルをリサイズにより掲載。シャープ効果以外のレタッチなし。

【写真1】
 
【写真2】
 
【写真3】
 
【写真4】
 
【写真5】
 
【写真6】 デジタルズームを用いて撮影。
 
 
使用機材
撮影カメラ
Canon IXY-DIGITAL200