※ このページは、2000-2004年まで続いたHP『津軽海渡のデジカメ紀行』に掲載していた写真や文面を、そのまま復刻させたものです。
   リンクは既に繋がっていないものが殆どであるため、その旨御了承下さい。
 
 
本日【2002年11月13日(水曜日)】の1枚の写真は!?
 
 
【2002年青森の秋 28/天然記念物 世界最北限のサル T/落穂拾い T】
 
 
 本日は5枚の写真を掲載致しました。


  さて、何から書いたらいいのだろかと本当に迷ってしまう・・・。
  詰め込み過ぎたセメントがなかなか固まらないように、私の頭の中ではまだ流動物が固形化せずに混沌と動き回っているようだ。

  一言で言ってしまうならば、それはショックである。
  野生の猿ならば以前に日光等で見たことがあるが、ここの猿はまるで違っていた・・・。
  動物園で飼育されている猿は、ストレスと餌やメスの取り合いで体中に傷を作っていそうだが、この脇野沢村の猿たちは、そのようないわゆる傷者が本当に少ない。
  日光の猿のように人に歯を剥くこともないし、人が手にした物を奪い取るようなこともしない。

「大好物のりんごやミカンを見せたりしない限りは、お握りや弁当ならば猿を見ながら食べても平気だよ。俺もいつも撮影の時はそうしているから」
  私にそのように猿の生態を詳しく教えてくれたのは、『脇野沢YH』のペアレントで、脇野沢にて15年間猿の生態を観察しつつ、自らもプロカメラマンとしてニホンザルやカモシカの写真を撮影してきた磯山隆幸氏であった。
  私が今回、尻屋の寒立馬を撮影した帰路に、下北半島の正反対に位置するこの脇野沢村にわざわざ脚を運んでみようと思うきっかけを作ったのは、他でもないこの磯山氏が公開していたHP(『森の中で』)を見たためであった。

「へえ・・・こんなにすばらしい写真を撮る人がいるんだ・・・。しかも随分と近くで撮ってるなあ・・・。私にも撮れるかなあ・・・」
  そんなことを、以前から考えていた。
  そしてこの度、脇野沢が位置する同じむつ半島まで来た私は、尻屋からのその脚で、脇野沢へと向かうバスに乗る算段を立てていたことは事実であった。しかし・・・

  連日尻屋崎に神出鬼没に現れては消える寒立馬に振り回されて、これまでにないほどの重症のマメを作ってしまい、片足を引き摺りゆっくりと移動するのがやっとの状態で、この後に脇野沢まで行くことなど、といてい不可能であるかに思えていた。
  一度は、『今回はおとなしく、弘前の実家に戻ろう・・・。このマメが化膿して、今後歩けないという最悪の事態も考えられるし・・・』と心に言い聞かせもいた。
  だがだが・・・

『どうしても猿を撮りたい、いや下見でいいから、脇野沢という村がどんなところか見たい!』という気持ちだけは、どうにもならなかった。
  11月10日の日曜日、私は尻屋からの帰路、青森市へと向かうバスが出発するむつ市に戻ると、持ち金を計算し、足りない分を銀行のATMから引き出すと、磯山氏が暮らす『脇野沢村YH』に宿泊の予約を入れ、マサカリ状になったむつ半島の刃先の下部、半島でもほぼ西端に位置する脇野沢へと向かうバスへと飛び乗っていた。

  しかし、当日は日本全国が異様な寒波に見舞われ、後に出逢う磯山氏が「15年間ここに暮らしているけど、こんな気候は初めてだね」と首を傾げるほどの厳寒の気候となった。
  窓外は雪の白一色に染まり、オマケに肉まで見えるほど大きく皮が剥がれた脚のマメが、ただ黙ってバスの椅子に腰掛けているだけで、ずきんずきんと心臓が脈打つ度に刺激通を産む有様。
  さが、この寒さが幸いしてか、猿を追っかけ沼地に入って泥まみれになっても、傷は化膿もせずに済むことになった。
 
  雪が降る10日を移動日にあて、猿の撮影に本格的に向かったのは翌11日になってからである。
  当初は撮影は見送るつもりであったが、YHで出逢った磯山氏の話を聞き、『ここまで来たのだから、何としてでも猿の映像を1枚だけは撮ってやる!』という気分にさせられてもいた。

  猿に関する磯山氏の話は、後に詳しく書くことにしたいが、まずは簡単に脇野沢村の猿に関して、同氏から聴いた話をしたい。

  この脇野沢村のニホンザルは、国から天然記念物の指定を受けている。種別で言うと、日光にいるニホンザルと殆ど変わらない。
  なのになぜ国の天然記念物に指定されているかというと、世界中に存在する400種にも及ぶ猿の仲間の中で、北緯47°に位置するこの脇野沢村のニホンザルが、世界で最北に位置する野生猿とのことであった。
  つまり、猿はこれ以上北に住むことができない、その北限の地がこの脇野沢村であるという。
「まあ正確には、ここより北に位置する大間(同じむつ半島)の猿の方が、北限と言えば北限なんだろうけどね」
  磯山氏は、そう笑って話してくれた。

「秋の猿は移動が速いんだよね。一日に3キロは移動する。移動しながら食料を探して行くんだけど、その群れの後に付いて撮影すると面白いよ。今の季節ならば、稲刈りが終わった田園で、落穂を拾って食べてるよ。米は人間ばかりでなく、猿も大好きなんよね。まあ、人間も猿の仲間だから、好きなんだろうけど」

  そんな、落穂拾いをしている猿を、群れを追いつつみつけ撮影したものが、本日の映像である。
  猿が生米を食べて、『美味い!』と喜んでいる様子を知ってもらいたくて、連写したままの映像で5枚続けてアップしてみた。
  猿の後ろにかすかに見える田園に捨てられた空き缶が、いかにも人里らしい。

「猿を撮影するなら冬がいいよ。1月から2月の間。秋ほど移動はしないし、木々の葉が落ちて、猿が発見しやすい。一箇所に固まっているし、雪に付いた足跡でも、居る場所が判るしね」
  その言葉を聴いて、私は即座に「真冬の2月頃に、寒立馬の撮影も兼ねてまた来ます!」と口にしていた。

  私の十八番に、寒立馬以外の動物が加わった、今日はそんな記念すべき映像なのかも知れない。

〔本日の写真は青森県下北郡脇野沢村にて撮影〕

撮影日〔2002年11月11日〕

※ 撮影されたRAWファイルを現像、JPEGに変換し、リサイズにより掲載。

【写真1】 「落穂の米をば頂戴してと・・・」
 
【写真2】 「んぐんぐ。藁から綺麗に米を濾(こ)しとってと・・・」
 
【写真3】 「米はよおく噛むと旨味が染み出て甘くなり・・・もごもご」

 
【写真4】 「うみゃ〜!やっぱり日本人は・・・いやニホンザルは米が一番のご馳走だにゃあ!」
 
【写真5】 「ほんじゃ、もう少しオコボレを探してと・・・。 ありゃりゃ、あんたさっきから
米を盗ってる私を撮ってるん??」
 
 
使用機材
撮影カメラ
Canon EOS-1D
撮影レンズ
SIGMA MIRROR 600mm
その他