※ このページは、2000-2004年まで続いたHP『津軽海渡のデジカメ紀行』に掲載していた写真や文面を、そのまま復刻させたものです。
   リンクは既に繋がっていないものが殆どであるため、その旨御了承下さい。
 
本日【2002年2月23日(土曜日)】の1枚の写真は!?
 
 
【2002冬の寒立馬 5 〜君の瞳に乾杯!〜】
 
 
 本日は、2枚の写真を掲載しました。


 昨日、実に20日ぶりに仕事場のある神奈川に戻ってきた私は、深夜バスでの疲れもあり、食事の後、すぐに午睡を貪った。
 実家のふかふかの布団とは違い、たとえ薄くても長年使い慣れた布団に横になるというのは、実に気持ちの良いものである。

 明日からまた仕事が待っていると思うと、辛くなるというよりはわくわくしてしまう。
 好きでこんなヤクザな“モノ書き”などしているせいもあり、こんな不思議な性格なのだが、さすがにどんな仕事も楽なものなど一つもなく、気苦労の毎日が続くのだなあ・・・と考えると、今のうちに寝ておき疲れを完全に取り去った方がいいのではないかという結論に達したためである。

 その夢の中に、雪原に佇む寒立馬の姿が出てきた。
 彼ら(正確には牝馬なので彼女ら)は、地吹雪が続く白一色の世界で、ただ黙々と雪を掻き分け、枯草を食み続けていた。
 雪の白に浮かぶ馬の黒い陰影はとても印象的で、半日を過ぎた今になっても、はっきりと瞼に焼き付いていた。
 夢には馬が食む音もなく、牧場一杯に広がる馬糞の匂いも、氷点下10度に達する寒さもない・・・
 しかし、私は完全に尻屋の地にて、馬達を見つめ、その姿をCCDに焼き付けようと必死にシャッターを押しつづけている。
 このような夢になって出てくるほど、とても印象的な5日間であった。

 いつもそうだが、この本州最果ての地に脚を運ぶと、邪心というものが起こらないから不思議た。
 都会の喧騒や、人間たちへの憎悪や嫉妬など、ありとあらゆる煩わしさが心の中から消えてしまう。
 何度も馬達の撮影をしていると、馬は人間の顔を覚え、挨拶しに眼前まで歩いて来る。
 この時、怖がらずに馬の頭を撫でてやると、馬はとても優しげな顔をし、撫でられることを好み、しばし草を食むことを辞め人間と心で接しようとするのだ。

 馬の目は、近くで見ているととても優しい。
 しかし、見知らぬ人間が近づき写真を撮影しようとすると、瞼に多少憤りや驚きやとまどいの陰を見せたりする。
 そんな表情を感じたら、しばしその馬に近づくことを辞め、遠くからの撮影に奔走する。
『私は君に危害を加えようとしているんじゃないんだよ。ただ君と友達になりたいだけなんだ。そんな表情をしてくれないかな・・・?』
 そう心で問い掛けると、やがて馬達の瞳も優しげな光に変わってゆくのが解る。

 本日掲載した、写真1の馬の瞳は、そんな慈愛を含んだ瞳であることが判るだろうか?
 馬の彼方には、地吹雪が舞い、別の馬の陰も写し取られている。
 見る人間によっては、そうは思わないかも知れないが、この尻屋に4泊し、4泊目の朝に撮影できたこの写真は、今回、尻屋で撮った寒立馬の写真の中では最高傑作なのではないかと私自身は考えている。
 馬がこれほど優しい瞳で私を見詰めてくれたことに感謝する一方で、普段は食事中、余り頭を上げない馬の顔を、この角度と構図で撮影させてくれた見えぬ力に礼を述べたい・・・。

 この馬は、私がカメラを構え、シャッターを押したほんの0.5秒後には、写真2のように真横を向いてしまった。
 こうなっては馬の表情は読み取れないが、旅館に帰ったあと、改めてパソコン上で映像を確かめた限りでも、馬がとても美人さんであることが解った。

 もし、馬に対して“一目惚れ”という気持ちが起こるのなら、それはこのような視線に出逢ったときなのかも知れない。

 そんな視線を送ってくれた『君の瞳に乾杯!』したい、気分であった。

〔本日の写真は青森県下北郡東通村・アタカにて撮影〕

撮影日〔2002年2月19日〕

【写真1】
 
【写真2】
 
 
使用機材
撮影カメラ
Canon EOS-1D
撮影レンズ
EF35-350mm
その他
吹雪のため、一脚を使用