※ このページは、2000-2004年まで続いたHP『津軽海渡のデジカメ紀行』に掲載していた写真や文面を、そのまま復刻させたものです。
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本日【2001年11月30日(金曜日)】の1枚の写真は!?
 
 
【鎌倉の紅葉2001/vol.8 長谷寺3 〜天国の子へ そして現世の母へ〜】
 
 
本日は10枚の写真を掲載致しました。
相当重くなっておりますので、写真が出揃うまで文面をお読みになりお待ち下さい。



【天国の子へ、そして現世の母へ】


〜天国にいるペコちゃんへ〜


天国にいるペコちゃん、お元気ですか?
ペコちゃんという問いかけも可笑しいですね。貴方には本来、男の子として産まれてきたなら、『桂月(けいげつ)』くん、女の子なら『紅葉(かえで)』ちゃんという出産予定日の美しい秋の景色になぞらえた名前まで用意して、ママはもちろん、パパも、田舎のおじいちゃんもおばあちゃんも楽しみにして待っていたのにね・・・。
それに天国という言い方も不思議な気がします。
天国とは、純真に一生を終えた人間が集う楽園のようなところ・・・。でも貴方は人間としてこの世に生を受けた訳ではないのだから、本当に天国に行ったら逢えるのか、ママにはとても不安でなりません。
ペコちゃん、貴方は今いったいどこにいるのかしら?それすら解らずに必死に問いかけています。

貴方が私のお腹の中に宿った時、パパと一緒に病院に行き、日ごとに大きくなるその体を超音波で確認しながら、とっても喜んでいたのよ。
貴方の大人の小指ほどもない、小さな小さな心臓がしっかりと動いてのを二人で確認したとき、パパはとても大きな歓声をあげて、モニターを指差して見せたの。ベッドに横になっている私が、そう簡単に振り向き見える訳がなかったのにね。
余りの声の大きさに、看護婦さんがびっくりしてたわ・・・。
あの時は、私のほうが恥ずかしくて、そしてパパの喜びようが、本当に嬉しくてなりませんでした。

その後もずっと貴方の心臓は鼓動を刻み続けていた。
ツワリは子供が自分がお腹にいることを知らせるために起こす一つの信号だと何かの本で読んだけど、そう、あんなに苦しかった時を経て、ママはあなたの存在を認識していったわ。
炊事すらできずに横になっていた私に、パパは毎日の買い物から何からすべてをかってでて手伝ってもくれた。
ご飯は喉を通らず、口にできるのはビネガーの効いたサンドイッチと果物だけ。
その時食べたモモの味が今でも忘れられないの。本当に美味しかったわ。
これじゃあ、貴方の骨になるカルシウムがぜんぜん摂れてないと思い、牛乳を口にしたこともあったけど、すべて吐き出してしまった・・・。
心配してお医者さんに尋ねると、「大丈夫ですよ。赤ちゃんはお母さんの骨からカルシウムを貰い、自らの骨として成長ゆくのですから」と答えてくれて、貴方が本当の意味で私の分身なんだなって自覚したの。それだけに貴方の顔を見る日が来るのが楽しみで、カレンダーの予定日に赤丸をして、一日一日を塗りつぶして過ごしていたの。本当に皆が楽しみにしていたのよ。
だけど・・・

ある晴れたとても穏やかな日だった。
私はツワリで体がだるいのも忘れ、昼過ぎまで寝入ってしまっていたのに気付き、慌てて起きたの。
その日は丁度、一月に一度の検診の日で、急いで病院に向かった。
そこで知らされたのは、余りにも悲劇的な結果だった。

超音波の機械を腹に当てて、赤ちゃんの姿を探すお医者さんの顔が俄かに曇っていったの。
いつもなら、ぴたりとあなたの位置をとらえ、モニターを確認するその視線が定まるのに、その日はいつまでたっても、貴方の位置を探して機械が私のお腹の上をさまよっていた。
その不吉な予兆は、側に居た看護婦さんの顔からも診てとれた。
何度も何度もこういった場面を経験しているはずだから、慣れてはいるんでしょうが、若い看護婦さんだったから尚更、ポーカーフェイスでいられなかったみたい。
機械の不具合かと何度もパネルの操作スイッチを確認していたわ。

やがて、お医者さんは、私にゆっくりとこう告げたの。
「可笑しいですね、いつもならこの位置に見える、心臓の鼓動が確認できないんですよ・・・」
私は一瞬どう尋ね返して良いのか解らなかった。
「それってお腹の中の子供が、心臓を動かしていないってことなんでしょうか?」
と聞き返したかったけど、その一言が言えなかった。
私には機械で調べるよりも先に密かな予感があったの。今朝からツワリが不思議と消えてしまっていたの。だから昼過ぎまで寝入ってしまった。
もしやという気はしたけど、余りの青空に、そんな不吉な予感も消し飛んでいたのね。
でも機械で調べる前から、何となく嫌な気はしていたんだ・・・だって貴方は私の子なんですから。

貴方はツワリで苦しむ私を見て、「もういいよママ、もう苦しまなくていいんだよ」とその心臓を止めてしまったの?だったらいいのに、どんなに苦しんでも、たとえ私の命をささげてたとしても、貴方と言う子の顔をひと目だけでも見たかったのに・・・腕に抱きたかったのに・・・それがママとパパの夢でもあったのに・・・

私はあの日、どうやって病院から家に帰って来たのか覚えていません。
会計にて本当にお金を払ったのかさえ、覚えてないの・・・。
家に着いた瞬間に、それまで流していた涙の何十倍も泣いたことだけは覚えてるわ。
数日間、瞼をただ泣きはらして過ごした・・・

そんな過酷な目に遭っているのに、まだママには苦しまねばならないことがあったの。
体に残った貴方の体を、外に出すと言う出産よりも辛い手術がね・・・

当日はパパも病院の待合室で会社を休んで待っていたわ。
手術中、私は麻酔をかけられているのにも関わらず、「奪(と)らないで!私の赤ちゃんを奪(と)らないで!」って泣き叫んで大変だったみたい。
そんなに私は貴方を愛していた。
まだどんな顔か、どんな性格か、性別さえも知らないのにね・・・

手術後、パパは病院の先生から、小さなプラスチックの瓶を貰ったらしいの。
パパは「せめて男の子か女の子かだけでも知りたい」って言ったみたいなんだけど、先生は「余りにも小さすぎて、わかりませんでした」とだけ詫びたそうよ。
その小さなプラスチックには、私の体から掻き出された貴方が入っていたらしいの。
中はどんな感じだった?と後にパパに聞いたけど、パパは「まるで塩辛のようだったよ。色から中身から、瓶の形まで」って、苦笑いをしていたわ。
「人間って、結局は生物なのかも知れないね。あんな瓶に入っちゃうんだから」
そう言葉を漏らした時の、パパの顔も辛そうだった・・・

その翌日、パパはお医者さんが書いた『死産証明』を持って、火葬場へ自転車で行ってくれたらしいの。
一晩だけ、家にある冷蔵庫の中で貴方は、私が好きなモモとビネガーがたっぷり効いたサンドイッチの横で過ごしたらしいんだけど、そうやってしかあなたを家に置いておけなかったパパの辛さもわかってやってね。

自転車の籠の中に入れて火葬場へと向かう途中、パパはマクドナルドのドライブスルーにある小さな遊園地で、貴方を抱いたまま滑り台を滑り降りたんですって。
生きて遊ぶことができたなかったけど、せめてこの世で貴方を抱いて遊びたかったのね。

火葬場では、子供用の焼き場が用意されていたらしいの。
小さな小さな子供の骨は、大人と同じ炎で焼くと砕け消えてしまうらしいので、特別に小さな火で焼いてくれるみたい。
焼却が終わり、やがて現れた貴方の骨を、パパは東急ハンズから買った綺麗な器に入れてくれた。
後で私も見せてもらったけど、それは、とてもとても小さな貴方の骨だった。
ビー球よりも少しだけ大きなあなたの頭蓋骨が印象的だった。あとはどれがどこの骨なのか、検討もつかなかったくらい脆く、はかない小さなものだった。
貴方の魂はどこかに消えてしまったけど、けれど貴方の小さな骨が入った器だけは、まだ私たちの側にあるわ。
この器は、ママとパパのどちらかがお墓に入る時に、一緒に入れようって約束しているの。
だって、貴方一人だけをこの器に入れて、誰も知らない人の眠る墓には入れれないものね。

貴方にとって一番幸せな方法は、一度も抱かれなかったパパとママの側においてあげることだと、私たち二人でそう決めたの。

パパは、貴方がもし男の子だったら、夏は野球、冬にはスキーを教えて遊びたかったみたいね。
男の人って、いつまで経っても子供なのね。貴方をいい遊び相手としか考えていない。
もし貴方が生まれていたら、大きな子供と、そして小さな貴方と、二人の子供を私はもてあますところだったかも。
もしあの時、予定通り貴方が産まれていたなら、今は8歳、小学校2年生になっている頃ね。
“死んだ子の歳を数える”って言うけど、そろそろパパのいい相棒になれた頃かもね。

そして、もし、あなたが女の子だったら・・・
今ごろは、お洒落に気を遣う歳になっていたわねきっと。
私も貴方に伝えたいことが沢山あった。
好きな歌手の唄。料理の楽しさ。そして、いろんな生き物を愛する楽しさ。
この生き物の中には、パパのようなとんでもないオスも含まれてるけどね・・・。
女性って強いようで、本当に弱いところがあるの。
この人についてゆくと心から誓ってはいても、ちょっと喧嘩したりすると、挫折して、見放してみたり・・・。でもね、いつかは貴方にも大好きな人ができると思う。
その時は、とことん悔いが残らないあなたなりの愛し方で、その人を支え、一緒に生きて欲しいの・・・。
たとえ傷ついたとしても、その苦しさは、私が貴方を失った悲しさの比ではないと思うわ。だって、やることを一所懸命してあげられたという喜びだけは、残るんですから。

随分と長い話になったけど、こんなに愛していた貴方のことは、一生忘れません。
いつかパパかママが貴方の所に行ったときには、きっと逢えると信じているからね。

この文面を、紙に記して、『長谷寺』の香炉の中で燃やします。
おそらく天国にいる、貴方のところに届くようにね。

ペコちゃんへ

大好きなママとパパより

と言うより、貴方のママとパパになれなかった貴方を愛する二人より



〜現世のママへ、そしてパパへ〜


ママ、パパ、そんなに悲しまないでね。
僕は今、沢山の友達ができて元気でいるよ。
ずっとパパとママのことは、ここから観ていたんだ。
ここではね、ママのいる現世と同じように僕も一年ずつ年をとって大きくもなれるんだよ。
誕生日もあるけど、それは僕がママのお腹の中で心臓を止めた日になってるんだ。ごめんね。

ママの言う通り、僕のいるところは天国って呼ばれているところだよ。
けれど、とっても素晴らしいところというイメージとは、ちょっと違うかも知れないね。

確かに一面に花が咲いていてとても綺麗だし、僕と同じような年の友達と自由に遊べるところなんだけど、凄く楽しいという気がしないんだ。どこか夢心地って言うか、実体のない虚空の世界って感じ。
ママのいる現世のように遊園地もないし、ゲームもテレビもない。ただ死んだ人たちが行列を組んで、ひたすら歩き続けているという世界なんだ。

それに、ここに来る人間は、皆幸せということじゃないんだ。
中には、他人に追いまわされている人や、逆に血眼で、誰かを探している人なんかもいたりする。
きっとパパやママがいる世界で、悪いことをしてきた人なんだよね。
他にも、昔の映画みたいに鎧を着た人や、ただただ寂しそうに川面を眺めてる人もいるよ。
何か言いたげに、僕を見つめてもいたよ。

ここに咲く花は、パパやママが僕に捧げてくれた花々なんだよ。
スイートピーや百合や菊や、こんなに綺麗なお花をくれてありがとう。
そうそう、この間、『長谷寺』で貰ったミニカーやお人形もあるよ。僕はお人形よりもミニカーがお気に入りさ。男の子だからね。
・・・あぁ、言うのを忘れたね。
僕は男の子だったんだよ。ママの期待通りにならなくてごめんね。
パパならきっと喜んでくれたよね?一緒に野球もスキーもできたよね?
けれど今はできない・・・。
でも、僕はそんなに悲しくないんだ。だっていつかパパやママとここで逢えるだろうし、第一、僕は本当にパパやママに愛されていたんだからね・・・。

僕には今、沢山の友達がいるんだけど、けれど僕みたいにパパやママから愛されてるって子ばかりじゃないんだ。
中には、一度もパパやママがお線香をあげに来てくれない子もいる。
「あなたは私の子じゃない!」って、生ゴミと一緒に捨てられた子供もいるほどなんだよ。
そんな子は、誰かが持ってきたお花をじっと見つめて、ただただ悲しい顔をしているんだ。
僕が声をかけても、絶対に笑おうとしないし・・・

ママの手紙、ちょっと長くて難しかったけど、ありがとうね。
こっちの世界では現世のような文字はなくて、色んな国の人とテレパシーのようなもので話ができるんだ。
ママからの手紙も、そんな不思議な力で、僕のもとに届いたんだよ。

僕もパパやママの子供として産まれてみたかったよ。
けれど、僕がママの体にいることで、これ以上ママを苦しめたくなかったし、こっちに来て解ったけど、僕の心臓はあまり丈夫じゃなかったらしいんだ。
もし、生まれていても、ママやパパと一緒に居れる時間は、3年がやっとだったみたい。
そうなってからこっちに来たんじゃ、ママはもっと辛かったでしょ?

でも、いつかまたパパとママの子供として、生まれることができるように、神様にお願いしているんだ。
どうか、今度は優しいママの子として、長生きできますようにって、毎日ね。

神様は僕の眼にも見えないし、どんな人なのかは解らないけど、天国のそのまた上にいるって聞いたよ。
その神様は、僕の願いをきっと聞いていてくれてると思うんだ。

ママ、そんなに悲しまないでね。
僕はママに愛されてるってことだけで、今はとても幸せなんだ。
僕が天国にいることで、そんな優しいママを守ってあげれるしね。

ママ、お腹には注意してよ。
もともとママは盲腸をしたりして、お腹はあまり丈夫じゃないんだからね。
何かあったら、すぐに病院に行ってね。どこかが悪くなったら、天国の僕がママに知らせてあげるから、きっとそうすると約束してね。

僕は今はそんなことしかできないけど、大好きなママやパパをずっとここから見守っているよ。
その代わり、いつかママが天国に来た時、僕を思いっきり抱きしめてね。
一度抱きしめて欲しかったんだ・・・それが僕の一つ目の夢だったんだよ・・・
その頃は僕も随分と大きくなっているだろうけど、ずっと、ずっとママやパパを待っているからね。

それから、パパにも、あまり煙草を吸い過ぎないようにって伝えておいてね。
自動車も飛ばしすぎないでって、ね。

たとえ僕がいなくても、パパとママは仲良く暮らしてね。それが僕の二つ目の夢。
僕が生まれなかったことで、喧嘩しちゃいやだよ。お願いだから・・・

最後になったけど、桂月って、いい名前だね。
パパとママの子になれなくてごめんね。そして、産もうと努力してくれて本当にありがとう。
ママやパパのお陰で、僕はこっちの世界では、とっても幸せものです。
元気で暮らしてね。僕はいつでも見守っているからね。

僕の愛するママとパパへ。

桂月より


〔本日の写真は神奈川県鎌倉市の長谷寺境内にて撮影〕

撮影日〔2001年11月28日〕

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【写真上7】ミノルタ DiMAGE7でプログラム撮影。
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【写真上8】ミノルタ DiMAGE7でマクロモードに設定し、プログラム撮影。
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【写真上9】ミノルタ DiMAGE7でプログラム撮影。PLフィルター使用。
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【写真上10】ミノルタ DiMAGE7でプログラム撮影。PLフィルター使用。
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使用機材
撮影カメラ
ミノルタ DiMAGE7